【銀行】ネット銀行上場の舞台裏

今月に入って、楽天銀行が上場を検討していること、住信SBIネット銀行が上場申請を行ったこと、が報道されています。その背後にある狙いを探ってみましょう。

 

楽天銀行は、イーバンク銀行として2001年に創業しました。創業期には新生銀行やエイベックス、のちにはライブドアなども関与していましたが、2009年に楽天(現・楽天グループ)の子会社となりました。口座数は本年9月末で1138万口座であり、これはネット銀行の首位です。預金残高は6兆4993億円に達しています。ネット証券である楽天証券との口座連携が強みで、200万人以上が利用しています。また、2006年にはネット銀行初のデビットカードイーバンクマネーカード」を発行しました。現在の「楽天銀行デビットカード」です。

 

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楽天銀行

 

楽天グループは、携帯電話事業「楽天モバイル」への先行投資がかさんでおり、楽天銀行を上場させることで、資金調達の手段を広げる狙いがあると推測されます。思いのほか、楽天モバイルが苦戦している現状が背後にあるわけです。三大キャリアに挑戦する気概は評価できるものの、インフラ投資に莫大な費用を要する携帯電話事業への参入は、結果として無謀とも思える部分があります。

 

一方で、住信SBIネット銀行は10月8日、東京証券取引所に上場申請を済ませました。

 

www.sbigroup.co.jp

 

住信SBIネット銀行は、SBIと住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)の共同出資で2007年に銀行免許を取得したネット銀行です。SBIグループのネット証券であるSBI証券との口座連携や、住宅ローンが強みです。口座数は本年6月末現在で楽天銀行の半分にも満たない470万口座ですが、預金残高は6兆4479億円です。楽天銀行に比べ、1人あたりの預金額が高いと読み取れます。住宅ローンは本年8月に累計融資実行額が7兆円を突破しており、2022年3月期は10兆円を超す水準を目指し、業界首位を窺う勢いです。

 

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住信SBIネット銀行

 

SBIは住信SBIネット銀行の上場後も一定の株式を持ち続ける意向で、上場が実現すれば保有する子会社株の含み益が増えるため、グループ全体の価値を上げることが狙いと思われます。

 

両行の預金者層を比較した場合、楽天銀行中の低より下住信SBIネット銀行中の中より上、と考えられます。それぞれが発行するクレジットカードやデビットカードのターゲティングにもそれが現れていて、対象とする顧客層には明確な違いがあります。三井住友信託銀行が親会社になっている関係上、住信SBIネット銀行では一部の優良顧客向けにダイナースクラブカードの募集も行っています。

 

www.netbk.co.jp

 

暫定的推論ですが、

 

楽天銀行・・・・・・楽天グループ全体の資金ポジションの悪化

住信SBIネット銀行・・・・・・SBIグループ全体の企業価値の向上

 

がそれぞれの本音であり、明暗が分かれた上場計画になっていると分析しています。