2000年代半ば、個人投資家の間に“海外で銀行口座を開設しよう”ブームが起こりました。その仕掛け人の1人が私でもあります。当時、香港経由で海外の金融商品を買い、ついでに香港の銀行に口座を開設する、という内容のツアーを企画し、国内投資に飽きている投資家や経営者をアテンドしました。
多くの方々が香港上海銀行(HSBC)、あるいはスタンダードチャータード銀行あたりに口座を開設しましたが、そのほとんどがメンテナンスを怠り、放ったらかしの塩漬けになっていると聞いています。時折、アテンドした方々から思い出したように連絡があり、ATMカードが使えない、暗証番号が分からなくなった、みたいな相談があります。おそらく口座が凍結になっていて、ATMカードやネットバンキングが使えない状態にあるのでしょう。
昨年末、HSBCは HSBC Mastercard Debit Card を発表し、今年1月からアプリやネットバンキングで申し込みが可能になりました。到着までのプロセスを振り返るとともに、このカードの特長もご紹介したいと思います。
実際にアプリで申し込みが可能になったのは、1月下旬か2月上旬だったようです。
2月4日(木) アプリから申し込み
2月12日(金) カードが国際郵便で到着。アクティヴェーション
4月13日(火) PIN記載のDMが国際郵便で到着
カード自体のデザインは秀逸(↑)。HSBCライオンがプリントされています。ターコイズブルーに近い青が基調で、当節流行りの縦型。カード番号や有効期限は裏面に記載。加えて、Mastercardのグレードは、上から2番目の「world」です。そのせいか、表面のMastercardのロゴマークは、赤とオレンジの二連ではなく、銀の二連です(←プラチナやブラックに採用されているやつね)。Mastercard Contactlessも搭載されており、Google PayやApple Payでも使えます。
カード自体は1週間強で届きましたが、PINが届いたのは2か月後。。。
アクティヴェーションに失敗したのかと思い、何度もHSBCにチャットで問い合わせました。担当者の説明は、「郵便が途中で消失した可能性がある。PINは店舗でしか再発行できない」というもので、この状況下で渡航できるわけねぇだろう~、と東京の中心で愛(不満!)を叫んでいました。
すっかりあきらめ、忘れかけたある日、唐突に国際郵便が届いたわけです。何でもコロナの影響で国際郵便が船便になっていて、香港~日本間は通関手続きを含め2か月程度かかるとのこと。もちろん、日常的に使うカードではありませんが、発行から2か月も使えない状態のまま放置プレイとは、国内の金融機関だったら大事件です。
海外投資に携わる者は、こういう大陸的な「時の流れに身をまかせ、あなたの色に染められ」なければなりません。
さて、このカードの特長に移ります。
------
1.マルチカレンシー口座
HKD=香港ドル
USD=米ドル
JPY=日本円
EUR=ユーロ
THB=タイバーツ
AUD=オーストラリアドル
NZD=ニュージーランドドル
CAD=カナダドル
CHF=スイスフラン
12通貨に対応しています。為替レートに合わせ、有利な通貨で決済できます。両替はアプリでできますので、暇な方は時々のレートで決済通貨を変えて使うことが可能です。
2.為替手数料なし
上記12通貨間の口座内振替が無料でできます。
3.HSBCのATMでキャッシング手数料なし
日本国内で恩恵を受ける機会は少ないですが、海外において、HSBCのATMで現地通貨を引き出す際、キャッシング手数料は無料です。
4.決済時に0.4%のキャッシュバック
還元率は小さいですが、デビットカードとしての決済時に0.4%のキャッシュバックがあります。
------
私の場合、日常的に使うカードではありませんが、月1回はATMで残高照会を行っています。海外渡航が制限されている現在、メンテナンスだけは怠らないように。発行した方は、凍結されないように、マメに残高照会や引き出しを実行してください。デビットカードになったのですから、たまに店舗の買い物で使うのもいいでしょう。
コロナ禍以前、海外旅行時は旧世代のATMカード(↓)を意識して使っていました。旧カードには銀聯(Union Pay)と易辨事(EPS)が附帯されていましたので、マカオのカジノなんかで便利に使えたんですよね。このカードでチップを買い、ゲームで勝った分は香港国際空港のATMで口座に入金し、次回の軍資金としてプールしたり。
早く渡航制限が解除になり、新カードでカジノに突撃できる日が待ち遠しいです。新カードはマルチカレンシーですから、チップ購入時に通貨を選ぶ必要もありませんしね。
海外投資を試みる者は、第一に、マメでなければなりません。「マメな男はモテる」とはよく言ったものですが、お金にモテるにもマメでなければならないようです。ズボラな性格の人は投資に向かないと思います。
第二に、海外投資は長期分散が基本ですから、せっかちな方は向かないと思います。「短気は損気」とぞ申します。寛容な心で、自分に有利な風を待つことです。せっかちな方は、国内でハイリスクハイリターンな商品を探しましょう。
投資は、自分の性格に合う商品と長く向き合う気持ちで行うもの。投資に限らず、金融サーヴィス全般に共通することかもしれません。己を知ることが投資の第一歩と言えるでしょう。
以上、HSBC Mastercard Debit Cardのご紹介でした。