前回の経済圏シリーズでは、SBI経済圏を取り上げました。
この間に、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)がOliveを開始することが発表され、経済圏の囲い込みに向けて、一気に事態が進展しました。
第3回は、JAL経済圏です。
昨年末にJALは、来年1月に新ステイタスプログラムを開始すると発表しています。コロナ禍を経て、本業以外に経済圏を広げる必要性を痛感したものと思われます。航空需要一辺倒の戦略を見直し、日常生活に密着したサーヴィスまですそ野を広げることが目的です。
JAL経済圏の構成要素
現在、JAL経済圏は、JALマイレージバンク(JMB)の顧客情報を軸に、JALカード、JAL Gobal WALLET、JAL PAK、JALショッピング、JALでんきなどで構成されていますが、あくまでも本業の航空・旅行での需要が7割以上を占めており、日常生活(ライフ)分野の拡大は、今後の課題です。
というか、現時点で「JAL経済圏」というものが成立しているのかは微妙なところ。。。
JMBの会員数が約3,000万人ということから、わが国の人口の1/4程度のポテンシャルがある経済圏を見込めるわけです。
そこで、新ステイタスプログラムを投入することにより、ライフ分野を強化し、本業の航空以外へ経済圏を拡大し、収益構造の安定化を図る狙いです。
新ステイタスプログラム
新ステイタスプログラムへの参加は、原則としてCLUB-A以上のJALカード(CLUB-Aカード、CLUB-Aゴールドカード、JALダイナースカード、プラチナ)を所有することが条件です。JMB会員であっても、非JALカード会員ではプログラムを利用できません。
ということは、JAL経済圏はJALカードを軸とする経済圏といえます。SMFGも三井住友カード(SMCC)を軸に据えてOliveを展開するわけですが、JALグループにもJALカードという長年の蓄積があり、日常的な決済の中心がクレジットになるのは当然のことでしょう。
JALカードのデメリット
JALカードのデメリットは、提携カードであることです。裏を返せばメリットでもあるのですが、ブランドごとに提携先が違うわけで、これは経済圏の分散につながります。しかも、ジャルカード(法人のことです)の大株主は三菱UFJ銀行と三菱UFJニコス(MUN)であり、常に三菱グループの意向を気にしなければならない立場にあります。
それゆえ、SMCCとの提携カードは発行できません。AmexブランドもMUNの加盟店開放型であり、アメリカン・エキスプレス本体発行ではありません。ダイナースブランドを発行するため、三井住友トラストクラブと提携するのが精一杯の状況です。
三菱グループ依存の関係を見直し、全方位外交に転じるか、別のグループとがっちり提携するか、戦略の見直しが必須と思います。
三菱グループとの関係性
現時点で、三菱グループにOliveのようなサーヴィスの動きはありません。グループの体質からして殿様商売ですから、同様の金融商品やサーヴィスを提供するとしても周回遅れになることは目に見えています。
過去のJALも殿様商売でやってきて、一度、倒産の憂き目を見ているわけですが、その際に債権放棄などで三菱グループの世話になっています。しかし、再生から10年以上が経過し、航空業界を取り巻く状況が激変している現在、三菱グループへの義理を通したところで、JAL経済圏の形成に必ずしもプラスに働くわけではありません。
JAL Global WALLETとSBI経済圏
そこでカギとなるのが、JAL Global WALLETです。というより、そのインフラを提供しているSBIグループとの関係性です。
JAL Global WALLETは、プリペイドカードとJAL NEOBANKが利用できますが、これは住信SBIネット銀行との提携で実現しているサーヴィスです。
金融におけるJALの現状は二股状態になっており、JALカードでは三菱グループと親密ですが、一方でJAL Global WALLETではSBI経済圏に属しているわけです。このあたりの腸捻転を解消し、SBI経済圏、そして、その先にある三井住友グループとの連携を強化していけば、わが国の経済圏の勢力図は劇的に変化し、面白くなる可能性があるのです。
SBI経済圏との連携
この際、ジャルカードの資本関係を整理し、SBIグループをクッションにSMCCと提携するのも一案かと思います。SMCCが審査するJALカードの発行です。「JAL Oliveカード」とかが理想です。百歩譲って、JAL NEOBANKのクレジットカードでも構いません。
三菱グループがジャルカードの持ち株を手放す可能性は限りなく低そうですが。。。
そうすれば、三井住友+SBI+JALという大経済圏が誕生するわけで、ワクワク感が倍増どころか、100倍くらいに増幅します。
ANAはどうなるんじゃい?、という問題も発生しますがね。
JAL経済圏の未来
いずれにしても、来年1月開始の新ステイタスプログラムの出来具合が、今後のJAL経済圏の形成に大きく影響することは想像に難くありません。サーヴィスイン時にJALカードがどのようにパワーアップしているか、そこが成否の分かれ目ではないかと考えています。
新ステイタスプログラムで獲得できるマイルが、VポイントやTポイントとしても使えるとなれば、利便性は一気に増します。そしてOliveのように、アプリ上でJALカードとJAL Gobal WALLETが1枚のナンバーレスカードにまとまり、住信SBIネット銀行の口座に紐づくとしたら。。。JMBが銀行口座として機能するとしたら。。。
妄想は限りなく膨らむわけですが、JALがそのくらいのサーヴィスを展開しないと、次世代のフィンテックとしては落第ですし、新ステイタスプログラムに切り替える意味もないと思います。
JAL経済圏の今後に期待します。
※本記事は、筆者の願望や予想に基づく内容が含まれています。