前回のブログでは、香港と深圳の間に位置する国境、羅湖口岸を紹介しました。今回はマカオと珠海の間に位置する 拱北口岸 について書きたいと思います。基本的にコロナ禍前の話です。
拱北口岸は中国側の名称で、マカオ側は 關閘(ボーダーゲート) という名称です。1999年、マカオは中国に返還されましたが、50年間はポルトガル統治下の制度を維持する「一国二制度」を採用しているため、依然として出入境検査場が設けられています。この国境が開設されたのは1849年ということです。当時のマカオ側の入口(↓)が遺構として残っています。
羅湖口岸同様、ここ拱北口岸も世界最大級の出入境者数を誇ります。コロナ禍前の2019年現在、多い日では一日あたり60万人の出入境があるそうです。なぜって? 「そこにカジノがあるから」。たくさんの人であふれかえっていますが、ほとんどが現地人です。外国人専用レーンがあるので、私たち日本人はスムーズに通過できます。
しかしながら、私はある時、マカオから珠海へ入境する際、入国審査で30分近く足止めをくらったことがあります。ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)に準じる扱いだったのかもしれません。審査官からかなりしつこく尋問されました。一緒に入境したビジネスパートナーは型どおりの審査で先に通過していったのですが、私は職業や身分について根掘り葉掘り聞かれました。別室へ連れて行かれそうな雰囲気で、さすがの私もこの時ばかりは少しビビりましたね。何も心当たりがないのですが、中国側に“好ましくない”データがあるのかもしれません。過去には深圳で、公安当局に尾行されていたフシもあります。
もちろん、逆のコース、珠海からマカオへ入境する際には、そんな尋問はありません。“カジノへようこそ”的な、ざるの審査です(いや、審査官は真剣でしょうが)。カネさえ持っていれば、誰もかれもが“好ましい人物”です。外交問題など無関係。マネーの力は怖ろしいものです。
さてさて、珠海側の拱北口岸には珠海駅があり、地下はショッピングモールというか、市場のようなところです。珠海市民の日常的な買い物の場になっています。腸粉(米麺)やフルーツがおいしかった記憶があります。当然、通貨は人民元ですが、香港ドルも使えます。店によっては、マカオパタカを受け取るところもあったような。
マカオ側の關閘はバスターミナルになっています。そのほとんどが各カジノの送迎バスです。どのレーンも長蛇の列。人気のカジノのバスに乗車するには、2台か3台待たなければならないこともあります。炎天下でのバス待ちで熱中症になっちゃう人もいます。レーンが渋滞していて、バスが切り返しやバックを繰り返す光景も見られます。怒号が飛び交っていました。
これらの送迎バスで、關閘からマカオ半島部新口岸地区までは15分程度、コタイまでは30分程度でしょうか。派手な塗色のバスに、ギラギラした車内。一獲千金を夢見る現地人の真剣なまなざしが光ります。
送迎バスは無料ですので、うまく活用すれば、カジノ周辺の観光地を巡ることもできます。が、そういう人が増えてきたのか、カジノのメンバーズカードを提示しないと乗れないバスも出てきました。
こういう流れですので、次回は当然、カジノのお話ということに。